Generalized Almost Perfect Nonlinear関数とFermat曲線についての研究討論

整理番号 2024a017
種別 一般研究-短期共同研究
研究計画題目 Generalized Almost Perfect Nonlinear関数とFermat曲線についての研究討論
研究代表者 黒田 匡迪(日本文理大学工学部・准教授)
研究実施期間 2024年9月20日(金) ~ 2024年9月24日(火)
研究分野のキーワード APN関数,GAPN関数,幾何学的既約,Fermat曲線
本研究で得られた成果の概要 有限体上の非線形性が高い関数としてAlmost Perfect Nonlinear(APN)関数が研究されており,標数2の場合に暗号理論や符号理論へ応用されている.例えば,符号理論では,標数2の例外的APN関数の完全分類を与えることで例外的数の系列を決定した.一方で,奇標数の場合には,基礎研究が十分ではなく,これらの分野へ応用されていない.このことは,標数2の場合のある代数的性質が,奇標数の場合の既存の定義では成立しないことに起因していると考える.近年,標数2の場合の代数的性質を保つ奇標数への一般化であるGeneralized APN(GAPN)関数が定義され,国内外で研究されはじめている.本研究では,例外的GAPN関数の分類に関する研究の深化を目的とする.上記の通り,標数2の例外的APN関数は暗号理論・符号理論へと応用されているため,本研究で得られた結果を基に,これらの応用を一般化する形でGAPN関数の暗号理論・符号理論への応用に期待できる.
 三井健太郎氏(琉球大学)とのこれまでの共同研究の中で,MAGMAを用いた数値実験により,標数3の特殊性を観察しており,主に標数3の場合に研究を行ってきた.これまでの研究において,例外的GAPN関数の特徴付けを次のように与えた:単項関数が例外的GAPN関数であるための必要十分条件は,その単項関数が定めるある代数曲線が基礎体上で定まる幾何学的既約成分をもたないことである.この特徴付けにより,例外的GAPN関数の分類に関する研究は,代数曲線の幾何学的既約成分の研究へと帰着できる.代数曲線が基礎体上で定まる幾何学的既約成分をもつか否かの判定は,この代数曲線の特異点の個数評価の問題に帰着できる.この問題は,有限体上のFermat曲線の有理点の個数評価の問題へと部分的に帰着できる.必要な個数評価の予想は既に見出しており,数値実験では予想成立の確らしさを確認できている.この予想の解決を目標に,新たに星明考氏(新潟大学)を加え,3名での短期共同研究を実施した.
 採択から研究討論までの間も上記予想の解決に取り組んできた.本研究討論の直前に実施した研究集会において,深澤知氏 (山形大学) から頂戴したアイディアにより,上記予想の部分的解決が得られている.本研究討論においては,星明考氏からFermat曲線の有理点の個数とJacobi和や円分数との関係についてご指摘いただき,これらの専門知識を集中講義形式で解説していただいた. 上記予想の解決には至っていないが,本研究の問題や関連する内容の理解を深めることができた.特に,Fermat曲線の有理点の個数を円分数を用いて記述することで,任意の奇標数の場合に問題を拡張することができ,今後の共同研究への発展にも期待ができる.
組織委員(研究集会)
参加者(短期共同利用)
三井 健太郎(琉球大学・准教授)
星 明考(新潟大学・教授)