数理モデル及び機械学習手法を用いたCOVID-19ワクチン誘導免疫応答の定量的解析

整理番号 2024a029
種別 若手・学生研究-短期研究員
研究計画題目 数理モデル及び機械学習手法を用いたCOVID-19ワクチン誘導免疫応答の定量的解析
研究代表者 朴 炯基(名古屋大学大学院・理学研究科・助教)
研究実施期間 2024年5月14日(火) ~ 2024年5月17日(金)
2024年7月18日(木) ~ 2024年7月20日(土)
研究分野のキーワード 数理モデル、機械学習、ヒトの免疫応答、COVID-19 ワクチン
本研究で得られた成果の概要 本研究では、日本国内最大規模のCOVID-19ワクチンによる抗体誘導データを、数理モデル・人工知能・ベクトル解析の手法を統合的に活用して分析を行った。従来の多くの関連研究は、観測データに基づいて集団レベルでワクチン誘導抗体を定性的に評価するものが中心であった。それに対し、本研究では数理科学技術を応用したデータ解析手法を開発し、ワクチン誘導抗体動態を集団および個人レベルで定量的に評価することを目指した。特に、機械学習やベクトル解析の理論を活用した解析を行うため、この分野の専門家である九州大学の鍛冶教授との共同研究を実施した。

本研究で使用したデータは、「福島ワクチンコホート」に基づくものであり、約2,500名の参加者を対象に、数回のワクチン接種後の抗体変動を2?4年間にわたり追跡したものである。まず、個人レベルでのデータ分析を行うため、mRNAワクチンが抗体を誘導するプロセスを記述した既存の数理モデルを導入し、今回分析したデータに適用できるように拡張した。このモデルを福島ワクチンコホートのデータに適用し、データフィッティングを行うことで、個々のワクチン誘導抗体動態を再構築した。そして、この再構築された抗体動態から、ピーク抗体量、持続期間、累積抗体産生量といった特徴量を算出し、それらを数理モデルのパラメータとして用いることで、各個人の抗体動態を定量的に表現した。

次に、次元削減技術(PCA)を用いて高次元の数値データを2次元に圧縮し、集団全体の抗体動態を離散ベクトル場として表現した。その後、RBF法を用いてこの離散ベクトルを連続ベクトル場に補間し、Hodge分解などのベクトル解析の理論を適用した。しかし、この手法によって生成されたベクトル場はランダム性が非常に高く、直ちに分析することは困難であることが判明した。

今後は、離散ベクトル場を方向ごとにいくつかのグループに分類し、最大限単純な形に変換した上で解析する方法を検討する。または、圧縮された2次元ベクトルが適切にベクトルの性質を保持するようにする共有潜在空間を考慮し、その潜在空間を用いた次元削減手法を適用する予定である。この方法により、より一貫性のある解析が可能になることが期待される。
組織委員(研究集会)
参加者(短期共同利用)
朴 炯基(名古屋大学・助教)
三宅 美登(名古屋大学・B4)
鍛冶 静雄(九州大学・教授)