エクスパンダーグラフにまつわる数理科学と応用
整理番号 | 2025a037 |
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種別 | 若手・学生研究-短期共同研究 |
研究計画題目 | エクスパンダーグラフにまつわる数理科学と応用 |
研究代表者 | 佐竹 翔平(熊本大学 半導体・デジタル研究教育機構 総合情報学部門・准教授) |
研究分野のキーワード | エクスパンダー、情報科学、数理科学、産学研究 |
目的と期待される成果 |
エクスパンダーは、辺が少なく、局所的な連結性が高いという一見相反する特徴を持つ興味深いグラフであり、効率的な情報伝達や高速攪拌性を活かして、耐量子計算機暗号や量子符号など情報科学の幅広い分野で理論的・応用的に重要視されている。近年では、Googleなどの企業がエクスパンダーの研究を進めており、暗号技術や機械学習を含む産業分野への応用可能性がますます注目を集めている。このように、エクスパンダーの理論的基盤は情報科学の革新を支える重要な要素である。 エクスパンダー研究の中核となる課題は、次の2点に集約される。 (1) エクスパンダーの構成法の確立と高度化: 代数的構成は明示性が高い一方で、群論や整数論といった数学の難解な問題に直面することが多く、第2固有値の評価や構造解析が困難である。組合せ論・アルゴリズム的な構成は、数学的な課題を回避できるものの、構造解析や性質の透明性が低下する傾向がある。このため、両者の長所を統合したハイブリッド構成法が必要とされる。 (2) エクスパンダーの応用可能性の拡大と解明: 暗号理論や符号理論、機械学習などの応用において、エクスパンダーの特性がその有用性を左右する。特に、第2固有値や構造に関する深い理解が応用可能性を広げる鍵となる。また、エクスパンダーは暗号学的ハッシュ関数、量子LDPC符号、グラフニューラルネットワークなどの分野においても期待されているが、その応用可能性はまだ十分に開拓されていない。特に国内では、産業界との連携が未だ限定的であり、組織的な研究体制や応用の推進が課題である。 以上の背景から、本研究では、以下の2つを目的とする。 目的1: ハイブリッド構成手法の開発: 代数的構成と組合せ論的構成の利点を統合した新たな構成手法を提案し、エクスパンダーの特性を最適化する。これにより、構造解析を容易にしつつ、効率的な構成を実現する。 目的2: 学術・産業界を巻き込んだ応用可能性の拡大: エクスパンダーを軸にした暗号技術や機械学習などの新たな応用分野を開拓し、国内外の産業界との連携を強化する。特に、企業との共同研究を促進し、産業利用の具体例を提示することで、エクスパンダーの社会実装を推進する。 本研究によって、エクスパンダーの応用可能性の開拓と拡大、さらに関連研究分野と産業化との連携体制の確立と応用研究の推進が期待される。 |
組織委員(研究集会) 参加者(短期共同利用) |
相川 勇輔(東京大学 大学院情報理工学系研究科・助教) 池松 泰彦(九州大学IMI・准教授) Cid Reyes Bustos(NTT基礎数学研究センタ・研究主任) 清水 伸高(東京科学大学 工学院・助教) Hyungrok Jo(横浜国立大学 先端科学高等研究院・特任助教) 見村 万佐人(東北大学 大学院理学研究科・准教授) 佐竹 翔平(熊本大学 半導体・デジタル研究教育機構・准教授) |