希薄プラズマに現れる異方性拡散問題に対する構造保存型数値解法

整理番号 2024a040
種別 一般研究-短期共同研究
研究計画題目 希薄プラズマに現れる異方性拡散問題に対する構造保存型数値解法
研究代表者 川嶋 嶺(芝浦工業大学 工学部電気工学科・准教授)
研究実施期間 2024年10月29日(火) ~ 2024年10月31日(木)
研究分野のキーワード プラズマプロセス、イオンエンジン、プラズマシミュレーション、異方性拡散問題、Mixed Finite Volume Method、構造保存型解法
本研究で得られた成果の概要 本共同利用研究は主に二日間にわたって行われたハイブリッド形式での研究会において推進された。研究会は宇宙プラズマ推進機の技術者、産業用プラズマ源の技術者、そして数理科学研究者を交えたものとなっており、工学的な課題と数理科学からの提案をすりあわせる研究集会とすることができた。本共同研究で得られた成果を以下3点挙げる。
1) 異方性拡散問題に対する双曲型方程式系を用いたアプローチにおける離散最大値原理に関する解析。
 異⽅性拡散問題の数値計算において、離散最⼤値原理(Discrete Maximum Principle, 以下 DMP)を満たさない数値解が得られる事が知られていたが、研究代表者らが開発してきた、拡散⽅程式をそれと等価な1階の双曲型⽅程式系に変換して計算するアプローチを⽤いた場合であっても、数値解がDMPを満たさないことが分かった。粘性解理論、とりわけ単調性の条件について検証を進めていった結果、双曲型⽅程式系を構築する中で導⼊される任意パラメータの値を適切に選択する事によって、DMPを満たした解が得られる事が明らかになった。現在はDMPを満たすためのパラメータ設定条件に関する詳細な定式化を進めている。
2) ブラソフ⽅程式に対する構造保存型数値解法の提案。
 希薄流体の連続体モデルと静電場の計算を連成させる系における構造保存型数値解法の研究が紹介された。エネルギー保存を厳密に満たしたまま運動論的不安定性を⾼い解像度で解析された数値例が⽰され、プラズマ物理の諸問題や⼯学へ向けた応⽤可能性について議論が交わされた。
3) 歪対称行列を係数とする異方性拡散問題の解析。
 歪対称⾏列を係数⾏列に持つ 2 次元異⽅性拡散問題について、⽅程式の特性と計算⼿法に関して議論が⾏われた。歪対称⾏列を係数⾏列に持つ拡散方程式は、研究代表者らが開発したDifferential Operator Switching法(DOS 法)と呼ばれる⼿法によって、等価な移流−等⽅拡散⽅程式に変換できる事が⽰された。この種の異⽅性拡散⽅程式は移流の性質を含む事が明らかにされ、その数値計算には⾵上差分の考え⽅を導⼊する必要があることが分かった。移流部分の性質は流体⼒学における速度場と流れ関数の関係のアナロジーなどから説明可能であり、歪対称⾏列を係数に持つ拡散問題の物理的描像が明らかにされた。
組織委員(研究集会)
参加者(短期共同利用)
田上 大助(九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所・准教授)
Chamarthi Amareshwara Sainadh(Department of Mechanical and Civil Engineering, California Institute of Technology・博士研究員)
袖子田 竜也(株式会社IHI 技術開発本部 技術基盤センター・主査)